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国民病としてのCOPD

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国民病としてのCOPD

COPDとはタバコ病

20年程度の喫煙歴を有している人にとって、健康維持のためのキーワードは動脈硬化、癌、そしてCOPDでしょう。 ともに喫煙との関連が確認されていますが、COPDはシーオーピーディーとしか読みようがないせいもあり、呼び名も概念もなかなか普及していないように見受けられます。
COPDは慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease)の略語で、肺の病というばかりでなく、心臓病や癌などの危険因子としての側面もあることが知られています。
また高齢喫煙者に多い病気であり、加速度的に高齢化社会に突入していく日本においては患者数の増加が予想されており、動脈硬化や癌なみにCOPDの認知度を高めていく必要があります。

症状

労作時の息切れや、持続する咳・痰などが代表的な症状です。
進行とともに安静時にも呼吸が苦しくなります。
階段を上るとき以前よりも息切れがひどくなった、などの症状を認めた場合にはCOPDの可能性があります。
COPDの恐ろしいところは、呼吸苦などに気が付いた時点では既にかなり進行している点にあります。
動脈硬化の果てに発症する心筋梗塞の胸痛は極めて激烈、脳卒中も発症すれば本人も周囲もすぐに異変に気がつきますが、COPDに激烈なイベントが起きることは稀であり、息切れも風邪や年齢のせいにされがちです。
心筋梗塞・脳卒中をフテブテしく犯行声明を出す強力犯とすれば、ほかのものが原因と勘違いさせつつ密かに勢いを増していくCOPDは悪魔的知能犯といったところでしょうか。

日本におけるCOPD

日本人の有病率は8.5%(530万人)と推測されていますが、実際に治療を受けている人は数十万人と言われています。
COPDの9割は喫煙者であり、喫煙者の2割にCOPDが発症します。
COPDの発症率は喫煙量とともに増加し、高齢喫煙者では5割、重喫煙者では7割で発症すると言われています。
死因順位は現在第10位となっていますが、正しく診断されていないケースが多数存在すると予想されていて、実際には報告以上の順位である可能性があります。
世界全体では1990年には第12位であったものが2015年には第4位になりました。

発症のメカニズム

COPDはタバコの煙を主とする有害物質に長期間吸入曝露されることで発症します。
吸入されたタバコ煙は気道における複雑な免疫反応を誘導します。
それによって生じた蛋白分解酵素が肺胞という肺の基本単位を破壊します。
肺胞とは小さな袋(直径0.2mm)であり、これが3億個も集まってできたのが肺ですが、この袋の面積を全て合計するとテニスコートの半分くらいの広さになるそうです。
肺胞に取り込まれた空気を血液に取り込んだり、血液中のガスを肺胞に戻すことをガス交換と言いますが、小さい袋が集まっていることが効率的なガス交換には非常に重要です(図1)。

COPDになるとこの微細な袋構造がどんどん破壊され、表面積がどんどん失われていきます。
房についているブドウの粒の表面積の合計は、同じ大きさのリンゴの表面積より広いですが、COPDではブドウの房が1つのリンゴになるようなもので、表面積が激減してしまいます(図2)。

その結果、ガス交換の効率が低下します。
これだけでも息苦しさや動悸の原因になりますが、さらに別のメカニズムも作用します。
肺胞には気道を広げるバネ作用がありますが、喫煙によってこのバネ機構が破壊されてしまうのです。
空気を吐き出すときに胸腔内圧は上昇しますが、バネ機構が壊れた気道はこの圧に抗しきれずに潰されて閉塞してしまいます(図3)。

さらにタバコ煙が引き起こす慢性炎症によって粘液(痰)が過剰に分泌され、空気の流れが妨げられます。
この一連の作用によって息を吐き出しにくくなり、特に労作時に呼吸が苦しくなります。また慢性の異物刺激は持続する咳も誘発します。
COPDとは、これでもかこれでもかと様々なメカニズムに畳み掛けられた挙句に「息苦しく」なっていく病なのです。

診断

負担の少ない肺機能検査で簡単に診断することができます。
COPDの患者さんでは、1秒間に吐き出せる空気の量が減少しています。
その他、レントゲンやCTで肺の過膨張や肺気腫を認める場合にはCOPDの可能性があります。

治療

治療には禁煙、薬物療法、非薬物療法があります。

禁煙

まずは何をおいても禁煙です。
喫煙者は非喫煙者の2倍から5倍のスピードで肺機能が低下すると言われていますが、これは2年程度の禁煙によって非喫煙者と同程度に改善されます。
放置すれば時間とともに肺機能はどんどん低下していきますから、できるだけ早期に禁煙する必要があります。

各種吸入薬・内服薬

気道を広げる作用の吸入薬・内服薬などの有用性がいくつかの大規模臨床試験で示されています。

非薬物療法

呼吸リハビリテーション、在宅酸素療法、換気補助療法などの非薬物療法も有効です。

急性増悪

COPDにおいては、気道感染や肺炎、あるいは大気汚染を契機として急速に症状が悪化し、最悪の場合には死に至る場合もあります。
急性増悪の原因は大部分が細菌感染やウイルス感染です。
予防の第一は禁煙であり、さらに吸入薬や内服薬によるCOPDの適切な管理によって、急性増悪を回避することができます。
インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンの有効性も報告されています。

併発疾患

COPDは単に肺を障害するだけではなく、心血管系障害、骨粗鬆症、癌、抑うつなどさまざまな疾患の増悪因子であることが知られています。
吸入剤の使用によって呼吸器系の症状だけでなく、心不全や心筋梗塞などの心臓血管系の有害事象も減少します。
またCOPD患者の肺癌発生率は健常人の4倍であり、COPDが肺癌の発生リスクを高めている可能性があります。

生命予後

肺機能検査で高度の気流閉塞を認める場合、健常人の2.7倍の死亡率であり、5年間のうちに40%が死亡します。
入院を要するような急性増悪例の院内死亡率は11%、1年後の死亡率は43%と報告されています。

まとめ

多くがタバコによって発症し、今後増加が予想されるCOPDは、あまり知られていない割には罹っている人が多く、さまざまな余病の原因となり最悪死に至る病です。
しかし禁煙などで進行を抑えることができる病でもあるCOPDと上手につきあっていく基本は、早期発見・早期加療(禁煙)に尽きます。
動脈硬化の進行に伴う心筋梗塞や脳卒中は症状が激烈であり発症がわかりやすい一方、COPDの進行に伴う呼吸苦には心も体も慣れてしまい、かなり進行するまで気がつきにくい場合が非常に多いのです。
COPD対策の第一歩は、この病について知って頂くこと、そしてタバコを吸う方で呼吸苦・咳・痰の持続などの症状があてはまる場合には、年齢のせいにしないで早めに医師に相談していただくことです。

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